法律コラム Vol.22

債権者説明会

 倒産の場面における債権者集会には法律上のもの(裁判所が主催)と任意で行う事実上のもの(申立人側で主催)があります。ある程度大きい事案では申立直後に代理人弁護士が任意の債権者集会(説明会)を開くのが望ましいとされます。裁判所主催の債権者集会が行われるのは申立して数ヶ月後であることが通常で、債権者に何の情報提供も行われないので不満がくすぶることが多いからです。速やかに情報を公開し債権者の納得を得ておくことが事後の倒産手続をスムーズにするのです。

第1 破産者の業務内容
 破産会社は大正*年*月に*氏が創業した*業を前身として、昭和*年*月設立された。昭和*年*月に*が代表取締役となり現在に至っている。
第2 申立に至る経緯
 1 当初の経営状況
  *が昭和*年*月に有限会社*を設立した当初の資本金は*万円・年商は*万円程度であった。昭和*年*月に事務所を建築し営業所を設けた。同年*月*機器販売部門として有限会社*を設立。昭和*年頃は業界全体が好況の波にのっており年商*億*万円の実績を残した。業績が伸びたため平成*年に現在の所在地へ本店を移転した。
 2 経営状況の悪化と経営転換の逸機
   しかしバブル崩壊後は業界全体の需要が冷え込み、破産会社も厳しい状態が続くようになった。経営成績の悪化を受けて、破産会社内部では抜本的な経営改革を目指す声も挙がっていたが、過去の成功が大きかっただけに*は成功体験を捨て大胆な経営再構築を実行出来なかった。*がその必要性に目覚めたときには時機を逸していた。
 3 破産申立の決定
   *は個人資産も投入し懸命に会社の経営再建に努力したが、あまりにも負債が膨らんでいた。平成*年に入った頃から新たな借入をすることが難しくなり巨額の負債に返済の目処を付けるのが不可能となった。平成*年*月*日支払期日の手形の決済が不可能となった。
第3 破産宣告
 *地方裁判所*支部において平成*年*月*日午前10時00分破産決定がなされ下記の破産管財人が選任された。〒* *市*町*-*ビル*階 *法律事務所 弁護士*。 債権届出期間は平成*年*月*日である。裁判所の主宰する第1回債権者集会は平成*年*月*日と指定されている。
第4 負債と資産の内容
 1 破産申立時の債権者数は従業員を含み*名(社)、負債総額は約*億*万円(内、根抵当権による別除権を持つ債権者は*社。根抵当権の極度額は合計*億*万円)である。時間的余裕が極度に少なかったためこの数字は暫定的意味合いが強い。正確な数字は管財人の債権調査を得て確定されることになる。
 2 貸借対照表では相当額の資産が計上されているが、企業継続価値によるものであり企業解体価値としての資産価値はかなり小さいと思料される。特に製品・商品の名目で極めて多額の資産が計上されているが、この金額は会社の他の勘定科目に比して高額に過ぎる。
第5 契約関係の処理
 *は地域経済に大きい影響を与えるものであるから既に仕掛かっている契約については維持する方向で処理していただきたいと考えている(裁判所や管財人に既にお願いしている)。

* この債権者説明会が功を奏し大きな問題もなく管財業務が進められて手続は終了しました。

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