法律コラム Vol.151

会社更生手続とリース契約

昔、更生管財人代理の仕事をしたことがあります。最も神経を使ったのがリース契約の扱いです。更生手続上は更生担保権と扱う通説に従って乗り切りましたが「それが営業譲渡の場面でどう現れるのか?」は難問でした。当時(平成13年)起案した説明文書です。(*大幅に抽象化)

未払リース料は「更生担保権として取扱う」東京地裁の方式を踏襲し、物件の実質的評価額だけを優先的弁済に当て、残額は一般更生債権として更生計画案を策定しました。計画案の末尾には「消滅する更生担保権」としてリース債権を明示しております。この取扱が開始されたのは吉野屋の会社更生事件(昭和55年)においてであり、最高裁がリース債権を「共益債権ではない」と判示(平成7年)したことから上記取扱が(消極的に)上告審で支持されました。上記「更生担保権」の意味が抵当権などの担保物権と同義なのであれば物件の所有権は更生会社にあることになります。
 しかし、この判決の射程距離には難しい問題があり、リース物件の実質的所有権の帰属が直接的争点となった訴訟(引渡請求訴訟)は当職が知る限り存在しません。かかる訴訟に発展した場合に裁判所が「更生担保権なのだから所有権は債務者にある」と簡単に結論を出すとは言い切れません。この問題は「リース会社経営の根幹にかかわる」極めて重要な問題なのでリース会社が強く争ってくることがあり得ます。松田安正弁護士の書籍(「リースの理論と実務」商事法務研究会)の該当部分を参考として添付します(257頁)。訴訟になった場合の主張がある程度予想できます。
 確かに更生会社との関係ではリース債権を「更生担保権」として扱い、それが更生計画案により変更を受けることによって、リース会社と更生会社の関係は法的に問題なく解決します。しかし上記更生計画案はスポンサーとリース会社を直接規律するものではないので営業譲渡の効力が生じて両者が直接向き合う場面になったときにリース債権を「更生担保権」とする「解釈の違い」が出てくる可能性は否定されません。覚書等が締結されないで営業譲渡の効力が生じた場合、リース会社が「物件の所有権は当社にあるから引き揚げる」と言ってこないという保証はありません。

* 本件は営業譲渡契約が無事に締結され、譲渡代金を原資とした更生計画案が裁判所により認可され終結しました。譲受会社とリース会社の間でも特にトラブルはありませんでした。手探りの中で遂行した手順なのですが何とか無事に手続を終わることができて良かったです。
* 今は倒産事件を取り扱っていないので現在の理論的動向は判りません。この問題に直面した方は現在の基本書・判例・学者・実務家の見解等を参照の上で対処してください(参考文献:「リースクレジットの法律相談」第3版(青林書院)134頁、「リース契約法」(同)315頁など)。

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