5者のコラム 「学者」Vol.140

弁済後一部免除型和解の意義

ブログ「プラクティス・オブ・ロー」の記述。

訴訟上の和解で悩ましいのは請求金額から相当減額して和解に応じる場合、履行されなかった場合は依頼者は立つ瀬がないということである。その場合、和解を無効にして訴訟を継続できればいいのだが、そのような和解条項を決して裁判所はつくらない。和解が成立すれば後は関知しないというのが裁判所の姿勢である。だから代理人弁護士が考える他ない。例えば請求金額から相当に減額する場合は一括払いとし和解日に現金を受領することが考えられる。あるいは訴訟外で現実に履行する日程を調整し、履行された場合は訴訟を取り下げるが・履行されなければ期日続行するという裁判外の合意も考えられる。

請求金額から減額して和解に応じるとき「万一履行されなかった場合には依頼者は立つ瀬がない」というのは事実。なので「相手方が約束の通りに任意の支払いを継続する場合には減額を認めるけれども、約束を破る場合は請求金額の全額を認めておいてもらわないと後の強制執行のときに不利益だけが残って納得できない」という依頼者の不満を抑える和解条項を考えておく必要があります。そんな和解条項を「決して裁判所はつくらない」というのは言い過ぎです。代理人が誘導すればできます。弁済後一部免除型和解というものです(草野芳郎「和解技術論」信山社98頁)。①請求全額(たとえば100万円)の支払い義務を認める、②支払いは10万円ずつを原告指定口座に10回払いとする、③被告が期限の利益を喪失することなく7回(70万円)を支払ったら残30万円の支払い義務は免除する、というスタイルです。これは「相手方が約束のとおりに任意の支払いを継続する場合にだけ請求金額の減額(免除)を認める」型をとることにより「債務名義の確定性」と「任意履行のインセンティブ」を両立させるものです。若い弁護士さんにも習得して欲しい技術です。

医者

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