故山本満雄さんの意志を継ぐ

私は大学５年生になって司法試験勉強を始めました。憲法・民法・刑法の基本書を読み始めました。哲学と社会学で行き詰まっていた自分にとって読み進める作業は本当に楽しく２ヶ月程あっという間に過ぎました。が、勉強の成果を確かめようと司法試験の過去問にあたってみたところ全く解けませんでした。私は勉強方法の間違いを自覚し方法論の確立に向け参考になる本を探し始めました。そこで見い出したのが山本満雄「リーガルマインドへの挑戦」（有斐閣）です。法学部出身でない著者が、当時は奇跡的な２回の受験で合格できた秘訣を詳細に述べられた良書です。
　この本を読んで私は目の前の鱗が剥がれる感を強くしました。自分は法律の本を「見て」いただけであり「読めて」いなかったのだということが良く判りました。法律書を読むためには法律家独特の文法（要件と効果・総論各論・規範あてはめ等）を理解しないと駄目だと悟りました。これをきっかけにして私は辰巳法律研究所という予備校に通うようになり、その指導下で翌年の択一試験に合格することができたのです。「リーガルマインドへの挑戦」に出会えていなければ、もしかしたら私の司法試験合格は永久に無かったのかもしれません。
　「リーガルマインドへの挑戦Ⅱ」は１９８６年に出版されました。これは山本さんが弁護士実務を２年程経験された後で急死されたため、友人の方々が修習生時代の山本さんの遺稿を編集して出版にこぎ着けられたものだそうです。司法修習を非法学的な観点で描いた著作が他に無かったので、この本も反響を呼んだようです。私も愛読させていただきました。
　私は（山本さんを超え）２０年以上も弁護士実務を経験することになりました。山本さんの遺志を継ぎ「外」の視点で「リーガルマインドへの挑戦Ⅲ」を書き継いでいきたいと思っています。