5者のコラム 「学者」Vol.65

貧困と孤立は弁護士の敵である

昨年開かれた「くるめフォーラム2012」で上野千鶴子教授(ラディカルフェニミズムの論客として著名)の講演を拝聴する機会がありました。私が理解した講演要旨は概ね以下のとおり。

災害弱者としての「おひとりさま」が目立つ。女おひとりさまの敵は貧困。男おひとりさまの敵は孤立。長い下り坂にロールモデルは無い。子供はアテにならない(教育は子供から「貴方はもう要らない」と言われることが「成功」)。頼みになるのは友人知人のネットワークだ。「選択縁」の大事さ。帰属集団を複数化し人格のリスク管理を計ること。女縁を築く7戒(夫の職を言わない・子供を誇らない・学歴を言わない・奥さんと呼ばない・お金の貸し借りをしない・金儲けにしない・相手の内情に深入りしない)。加齢現象を恐れるな。無縁は無援につながる。弱さの意思表示の技術を身につける(弱さを認める・ニーズを言語化する・相手を見つける・自己主張の訓練をする・卑屈にならない・感謝とユーモアを持つ)。ボランティアの原則をわきまえる(やりたい人がやる・やりたい人はやりたくない人を強制しない・やりたくない人はやりたい人の足を引っ張らない)。

同様に、弁護士の敵は経済的苦境(貧困)と心理的不安(孤立)です。たぶん貧困と孤立の中で弁護士が良い仕事をすることは出来ません。この弁護士の困難を免れるロールモデルは存在しません。各人が自分にあった方策を探し出すしかない。弁護士会はアテにならなくなってきています。頼みになるのは友人・知人のネットワークです。帰属集団を複数化して人格のリスク管理を計ることも大事です。「無縁が無援につながる」のはどの仕事も同じ。自分の弱さを意思表示する技術も必要です。このような方策を持たない弁護士は今後苦境に陥る可能性が高くなるものと思われます。 

医者

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