5者のコラム 「学者」Vol.93

箴言のようなもの(その1)

1 戦争状態にある方の事件を受任するときも弁護士の心の中は平和でありたい。

2 小林秀雄は「人はその人にあった事件にしか出会わない」と述べている(城山三郎「少しだけ無理をして生きる」新潮文庫)。「事件が性格を作るのではなく、そういう性格だからそういう事件にあう」という。それが真実であるのなら、弁護士が良い事件にめぐり合うためには事前に良い性格を作り上げておかなければならないことになる。うーむ。難しい。

3 人生は何事もなさぬには余りに長いが何事かをなすには余りに短い。1日も・1時間も、何事もなさぬには余りに長いが何事かをなすには余りに短い。

4 人間知性の最も美しい輝き方は「私の師はこのように言われた」というスタイルで自分の師匠の素晴らしさを他人に伝えようとする言説である。仏典も・プラトンも・聖書も・論語もニーチェも、全て同じスタイルの言説だ。知性の根底には師匠への敬愛がある。

5 コミュニケーションは貴方のことが判らない(貴方をもっと知りたい)という宣言によって生成し「貴方のことが判った」という宣言によって消滅する。

6 ある先生が「人生は前向きに進むしかないが、後ろ向きにしか理解できないモノである」と書いておられる。尊いお言葉である。人間、たまには後ろ向きの考察が必要なのだ。

医者

前の記事

ビョ-キに対する寛容の心
役者

次の記事

大問題と個人の日常