5者のコラム 「5者」Vol.119

演劇的手法を教育に取り入れること

 米屋尚子「演劇は仕事になるのか」(彩流社)の記述。

学校教育で「生きる力」を育もうとするなら、コミュニケーションのプロである演劇人などが子供たちと活動をすることで、子供たちの表現力を伸ばしたり積極性を引き出したりできるのではないか。とりわけ異なる考えの人間同士の葛藤や問題解決は演劇の根幹にあるものです。学校の授業に演劇的手法を取り入れること自体は一部の教員の間では古くから実践されてきましたが90年代の終わりから芸術関係者の間で芸術家が授業にかかわる活動を普及させるべきではないかという気運が盛り上がるようになってきました。

 法律家もコミュニケーションのプロ。異なる考えの問題解決を専門的に行っているのが実務法曹です。その実践的知恵を授業に取り入れることが高い教育的効果を発揮することは当然といえます。実務法曹のコミュニケーション術を若干整理してみることにしましょう。
1 相手を(自分の客体ではなく)対等独立の主体として尊重する。
2 双方が自己の依って立つ見解を(誰からも強制されずに)自由に述べる。
3 主張する場合は結論を述べて理由を付加する。同意できる部分については争いを収束させる。争いの残る部分についてのみ根拠と証拠を検討する。 
4 互いの論拠を吟味し、妥協できるところがあれば妥協する(和解)。
5 妥協できないところは第3者の判定にゆだねる。その判定には従う。
 法律家的手法を学校教育に取り入れ異なる考えの人間の葛藤や問題を解決する手法を子供たちに学ばせる意義は多大です。かかる手法が学校教育現場に風穴を開けることを私は期待しています。