5者のコラム 「役者」Vol.130

演じることと遊ぶこと

多くの言語に於いて「演じる」という言葉は「遊ぶ」という言葉と重なります。その意義について「演劇学のキーワーズ」(ぺりかん社)は述べます。

遊びの中には勝敗や巧拙を決定する規則が前提される。自発的に参加することにもとづく自由も強調される。遊びの目的は遊び自体がもたらす無償の楽しさだが、上手く勝とうと思えば規則を熟知することと技に熟練することが必要になる。同時に遊びは定住や労働を重んじ倹約と禁欲を勧める社会においては秩序と安定への脅威・重みを欠いた幼稚な実践・生産や利潤に結びつかない無用な部分として否定的意味合いを担わされることも多い。社会の中にあって欠くことが出来ないものでありながら同時に社会秩序を脅かしかねないがために社会の中での周辺的な位置(都市における特定地域・年における特定の時期祭日・人生における子供時代・社会における特定身分)に固定すべきものであった。

弁護士業は自由業であり、いかなる依頼者と関係を結ぶか自分で決めることが出来ます。その大前提の上に「訴訟という舞台で役者を演じる」ので勝敗や巧拙を決定する規則に熟知するとともに技に熟練することが必要になります。良い役者が舞台の上で光り輝く如く良い役を得た弁護士は社会の中で光り輝くことがあります。他方、弁護士業は社会秩序への脅威・重みを欠く幼稚な実践・生産や利潤に結びつかない無用な職業として否定的意味を担わされることもあります。社会に不可欠のものであるはずなのに差別的な視線に曝されることも少なくありません。弁護士を目指している学生の方々には法律実務の意義(素晴らしさ)と問題点(難儀さ)に関する複眼的認識を持っていただければと思います。弁護士業務は「周辺的な意味」を濃厚に有しています。

易者

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