5者のコラム 「芸者」Vol.136

コントロールドラマのコントロール

林恭弘「へこまない技術」(阪急コミニケーションズ)に次の記述があります。

コントロールドラマとは「1度クレームを付けてみて、相手をコントロールできた経験から、クレームを繰り返すこと」を指します。こういったことを繰り返す者を産み出す背景は「毅然とした態度」で対応しなかったことによるものです。人間は良い面でも悪い面でも「成功した」という体験は自信となり、それを繰り返すことで次には確信となってゆきます。その成功体験を踏むことによって違うお店や会社へとコントロールドラマは飛躍していきます。

弁護士の事務所を訪れる相談者の中にはコントロールドラマを期待しているタイプの方が見受けられます。何か奇妙な形で過去に1度クレームを付けてみて相手をコントロールできたという成功経験を有している。それを「自分の経験則」として確立し絶対化しているのです。弁護士の重要な役割は「コントロールドラマをコントロールすること」です。社会的な問題を解決する規範には様々なものがあります。全てが法律で解決されている訳ではありません。当事者の合意により得られた紛争解決は、特段の事情が無い限り、尊重されるべきです。紛争解決規範を広く法というのなら法律を全く意識されずに形成された合意もまた法であり、法曹がそこに土足で踏み込むことには躊躇を感じます。しかし、それには限界があります。合意が形成される過程では(コントロールドラマを演じる)「声のデカい者のほうが勝つ」場面が見受けられます。事実に即した正義が必ず実現されている訳ではない。かかる場合、弁護士は声の小さい者の側に立ち正義を主張すべきです。毅然とした態度で臨むとはそういうことです。漫然と声のデカい者のほうが勝つ場面を許していると、その者に成功体験を踏ませ第2・第3の被害者を産み拡散させてゆくことになります。コントロールドラマに長じた「モンスタークレーマー」を法曹が助長してはなりません。