5者のコラム 「5者」Vol.137

新型コロナウイルスによる緊急事態

2020年4月7日、新型コロナウイルス特別措置法にもとづく緊急事態が宣言された。裁判期日は職権で取り消しとなり「追って指定」となった。以下はFB上に残した記録。>1918年のインフルエンザ流行は「スペイン風邪」と呼ばれているが、最初の感染がスペインで起こった訳でも特にスペインで猛威を振るった訳でもない。背景には第1次世界大戦がある。参戦国各々で厳しい情報統制が敷かれ士気の低下につながる情報や国としての弱みをさらす報道が封じられた。中立の立場を保っていたスペインではこうした情報統制がなかっただけである(サンドラ・ヘンペル「パンデミックマップ」日経ナショナルジオグラフィック)。日本での死者は74万人(内地45・3万人、外地28・7万人)。平時にこれほどの死者を出した事象は近代日本史に存在しない。発生は2期。前流行が大正7年秋から大正8年春。後流行が大正8年暮れから大正9年春。前流行は罹患率は高いが死亡率は低かった。後流行は罹患率は低いが死亡率が高かった。前流行でウイルスに出会っていた者は抗体を得て後流行に臨んだことによるものと考えられる。スペインインフルエンザは何故に忘却されてきたのか?多数の罹患者を出しながら死亡率は(ペストやコレラに比較すれば)高いとは言えなかった。軽く見る風潮は「スペイン風邪」という呼称に表れている。しかも、まもなく関東大震災が起きた。大地震による物的被害は甚大だった。スペインインフルエンザは多数の死者を出したが風景は変わらなかった。絵にならなかったので写真がほとんど残されていない。さらに昭和に入ると、もっと死者が増える戦争が続いたので、スぺインインフルエンザのことは記憶から消し去られてしまった(速水融「日本を襲ったスペインフルエンザ」藤原書店)。我々は歴史を生きている。未来に向け、過去を掘り起こし、現在を記憶(記録)しよう。