5者のコラム 「役者」Vol.51

高等裁判所の訴訟指揮

森野判事は控訴審に臨む弁護士に対して教示します(九弁連研修会資料)。

1 第1回期日における裁判所の釈明
 イ 核心的部分と枝葉末節に対する部分に対する釈明の違い。前者は判決の結論に影響することがないではない。後者は判決の手直しに必要なもの。
 ロ 紛争の全体像を知りたいための釈明
   紛争の全面解決を図るための情報収集を済ませておくこと。(代理人は本人から詳しく事情聴取して全体のストーリーを把握していてほしい。)
 ハ 1審勝訴側への詳細な釈明は結論見直しのサインかも?
2 弁論終結期日における裁判所の訴訟指揮
  代理人は裁判長の挙動や発言に全霊を傾けて心証を盗め。
3 控訴審における和解
 イ 高裁は事実審における最終審。結論の妥当性を重視する。
 ロ 法律論による解決は空しい。事実を基礎とした全体的解決を志向。
 ハ 不意打ち防止のための和解歓試があることを意識せよ。
 ニ 「まだ最高裁がある」は正しいか?(多くの場合正しくない。)

弁護士になって直ぐの頃、私は高裁独特の訴訟指揮の意味が判らず勝訴判決を取り消され逆転敗訴したことがあります。苦々しい思い出です。高裁裁判官は双方代理人に対し法壇の上から懸命のサイン(訴訟のあるべき解決に向けたメッセージ)を送っています。それは願いを込めた必死の演技と言えます。観客は舞台上の俳優の演技を良く観察し、その意味を酌み取るべきなのでしょう。

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