5者のコラム 「医者」Vol.101

長生きできない職業?

将棋の内藤國雄九段がこう書かれていました。

一般に綺麗なもの・美しいものを扱う職業は長生きし、汚いものを扱う職業は短命だと言われている。例えば音楽の指揮者・高僧(宗教家)・画家などは長生きのトップにあげられる。これらは綺麗なものを扱う(追求する)職業であるということに異存はないだろう。逆のものを扱う職業の方は(具体的にどれと挙げにくい面があるが)ひとつだけ挙げると外科医。手術解剖は人命を救うため止むを得ない処置なのだが、それが短命に繋がるとすれば気の毒な職業である。ついでに言うと精神科医も短命だという。(略)棋士の場合はどうか。手で触れるもの見えるものは美しく仕上げられた木の盤と駒でこれは綺麗なものと言えるだろう。しかし、それは外観だけで内側は(汚いとまでは思わないが)激しく炎が燃え盛っている世界である。むきになってやれば命を擦り減らす。高齢者には過酷で、体に疾患をかかえていたりすると確実に命を縮めることになる。もっとも気楽に楽しむという境地でやれれば、そう心配は不要だけれども、それを許すほどに甘い世界ではない(これは職業としての場合)。

統計的に弁護士が短命か否か私は判りませんが、印象的にはあまり長生きでないように思われます。弁護士業務は表向きは美しい理念をまとい静かに仕事をしているものですが、それは外側だけであって内側は(「汚い」とまでは言いませんが)激しく炎が燃え盛っている世界です。むきになってやれば命を磨り減らします。特に高齢者には過酷で、確実に命を縮めることになります。「気楽に楽しむ」という境地でやれば心配は不要ですけど、それを許すほどに甘い世界ではありません。
 私は周囲の理解が得られる客観状況を確保できた暁には、自分の誇りや健康を守るため、なるべく早めに引退できたらなあと願っています。

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