5者のコラム 「5者」Vol.144

金融機関との上手な付き合い方

田浦俊栄他「医師の開業5つの落とし穴」(幻冬舎)はこう述べます。

借金の好きな方はあまりいません。借金という行為が嫌いな方・利息が無駄と思う方・その両方、これらの理由から融資を受ける際になるべく少額で、かつ返済期間を短くしようとする方がいます。気持ちは解りますが運転資金が少額になる上に月々の返済額を多くするという行為は資金ショートを招きやすい状況を作り出します。経営者として大間違いです。事業上の借入れは借金ではなく投資、利息は保証料だと考えを転換して下さい。信用がない方はお金を貸してもらえません。借入額が大きければ大きいほど先生は高く評価されているのです。利息は経費となりその約4割は税金を減らすことができるため、実質的な負担は利率の6割程度です。借りられる最大額を借りて理想とするクリニックを安全に成功させた後、もし借り入れが気になる場合は一括返済をしてはいかがでしょうか。(77頁)

弁護士生活の中で1度だけ金融機関の融資を受けたことがあります。県弁副会長を引き受けた時です。副会長の仕事は激務なのでエネルギーの大半を費やさざるを得ません。自分の仕事に割く時間が消えます。既に受任している事件は何とか回していきますが新規の受任がほぼ出来ません。そのため着手金収入が激減します。他方、事務所の運営費は確実に必要です。そのために資金ショートをしないよう付き合いのあった銀行に相談しました。その銀行とは付き合いが長かったので私が希望していた額を全額無担保で快く融資頂きました。この借入金は副会長職を終わり弁護士業務が正常化した後で返済しました。幸い利息が低かったので、あまり負担感を感じることなく難局を乗り切ることが出来ました。法律事務所だって経営体ですから金融機関との上手な付き合い方は日頃から考えておくのが上策です。銀行からの借り入れは「時間稼ぎ」の良き手段でもあるのですね。