5者のコラム 「易者」Vol.17

薬物事案の弁護方針(直面化・回復志向・解決思考)

覚せい剤使用には次の段階があります(「入門覚せい剤事件の弁護」現代人文社)。
 

①機会的使用(チャンスがあれば意志的に使う段階・チャンスが無ければ使わない)。②習慣的使用(ある状況下では普通に使用する段階)。③強迫的使用(意思による制御が不可能な段階)。薬物依存のカウンセリングには以下の3種類があります。①直面化アプローチ(「やめなさい」と単純明快に伝えていく取り組み・現在思考)。②回復志向的アプローチ(過去の生き方について批判的に考え続ける取り組み・過去思考)。③解決志向的アプローチ(本人の心に寄り添い肯定的希望的に考え続けていく取り組み・未来志向)。

研修にて九州ダルク(DrugAddictionRehabilitation Center)の方の体験談を聞く機会がありました。世話人である八尋光秀弁護士(福岡県弁護士会)のお話では薬物依存者が立ち直るためには気心が知れた仲間との交流が不可欠なのだそうです。刑事政策とは難しい作業。刑事裁判の法廷で検察官が「これは犯罪行為だ・処罰すべきだ」と述べるのは①のアプローチです。その意義を否定するつもりはありません。これに対して弁護人は②および③アプローチを意識して被告人と接する必要があります。過去の生き方について批判的に考えるとともに被告人の将来をその心に寄り添って肯定していく作業が求められます。その作業は法律家というよりは(広い意味における)「呪術者」に近いものではないでしょうか?犯罪者の更生は口で言うほど簡単ではありません。