5者のコラム 「易者」Vol.142

苦境に陥ったときの対処

D・カーネギー「道は開ける」(創元社)の中に次の記述があります。
 

苦境に陥り、行き詰まったときは、次の魔術的公式を試してみよう。
1 「問題が解決できないときに起こりうる最悪の事態は何か」と自問する。
2 やむを得ない場合には最悪の事態を受け入れる心構えをする。
3 それから落ち着いて最悪の事態を好転させるよう努力する。

この記述は弁護士業務でも大いに活用できます。少し敷衍してみますね。
 相談者に対して「問題が解決できないときに起こりうる最悪の事態は何か」と発問することはリスキーな面もありますが弁護士が事後の見通しを冷静緻密に行うために有効です。プロ的見地で考えておく必要があります。その考察抜きに弁護士が行動を起こすことは危険です。理想論としては(信頼関係を形成できる)この段階を共有できる方のみ受任するのが望ましいと思われます。
 依頼者に対して「やむを得ない場合は最悪の事態を受け入れる心構えをする」よう促すことは当該依頼者にとっても弁護士にとっても重要です。ⅰ請求者(原告)を受任する場合、法的手続には限界があるので過度の期待を持たせないため「やむを得ない場合」があることを意識いただくことが必要です。ⅱ弁護士が被請求者(被告)を受任する場合もこの意識は不可欠。何故なら「最悪の事態を想起する」ことによって「良い結果が出た場合との差異」を意識いただけるからです。この意識が乏しい依頼者からは成功報酬を請求しにくくなるので弁護士実務上とても重要なことです。
 落ち着いて「最悪の事態を好転させるよう努力する」ことは依頼者との共同作業。上記事項を共有できた依頼者との間では「運命共同体」として良い関係を築くことが出来ます。