5者のコラム 「芸者」Vol.7

花街が消滅した理由

明治以降、我が国には500カ所以上も花街(京都では「かがい」という)がありました(加藤政洋「花街・異空間の都市史」朝日新聞社)。花街が消滅した理由を加藤氏はこう述べます。

①大衆消費社会の成立とともにインスタントな娯楽快楽が求められた結果「格式を重んじる花街」が敬遠された。昭和初年、数の上では全盛期を迎えていた花街は芸や遊興のシステムが時代遅れと見なされ、客離れが急速に進んだ。②花街が戦後の混乱復興期に成立した「赤線地区」に飲み込まれ、昭和32年の売春防止法施行による赤線消滅とともに運命をともにした。

かかる花街の歴史は弁護士業界の将来を考える上でも参考になります。①業務のあり方が時代の変遷についていけなくなった場合には利用者から急速に見捨てられる可能性があります。もちろん弁護士業務は法制度の枠内でしか行い得ませんし、依頼者の要望に何でも応えなければならないわけでもありません。しかし、弁護士業務は依頼者無しには存立し得ません。現代に生きる依頼者の使いやすい法的対処のあり方を考えていくことは現代の弁護士の課題だと思います。時代に媚びを売る必要はありませんが、時代と共に生きる覚悟は必要ではないか、そう感じます。②弁護士は他の隣接士業と一定の友好関係は保ちつつも、弁護士としての倫理感(見識・誇り)を堅持しなければなりません。弁護士は単なる事務処理業ではありません。象徴的に言えば、弁護士が扱っているのは「法」であって「法律」ではないのす。議会が定める法規は法の1つの認識根拠に過ぎません。当該事案において最も適切な紛争解決規範が法であり、弁護士は自己の倫理感を総動員してその発見に努めるのです。かかる倫理感を失ったときに弁護士は隣接士業と運命を共にするのかもしれません。

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