5者のコラム 「5者」Vol.91

自然界は弱肉強食か?

<問>自然界は「弱肉強食」と言うとおり弱い者が強い者に捕食される。でも人間の社会で何故それが行われないのでしょうか?文明が開かれたころは種族同士の争いが行われ弱い者は殺されていきました。ですが今日の社会では弱者を税金だのなんだので生かしています。優れた遺伝子が生き残るのが自然の摂理ではないのですか?
<答>え~っと、よくある勘違いなんですが自然界は「弱肉強食」ではありません。弱いからといって喰われるとは限らないし強いからといって食えるとも限りません。虎は兎より掛け値なしに強いですが兎は世界中で繁栄し虎は絶滅の危機に瀕しています。自然界の掟は個体レベルでは「全肉全食」で種レベルでは「適者生存」です。(略)この言葉は誤解されて広まってますが決して「弱肉強食」の意味ではありません。「強い者」が残るのではなく「適した者」が生き残るんです(「残る」という意味が「個体が生き延びる」という意味でなく「遺伝子が次世代に受け継がれる」の意味であることに注意)。そして自然の特徴は「無限と言っていいほどの環境適応のやり方がある」ということです。(略)人間の生存戦略は「社会性」。高度に機能的な社会を作り、その互助作用でもって個体を保護する。個別的に長期生存が不可能な個体(=質問主さんがおっしゃる”弱者”です)も生き延びさせることで子孫の繁栄の可能性を最大化するという戦略です。どれだけの個体が生き延びられるのか、どの程度の”弱者”を生かすことが出来るかは、その社会の持つ力に比例します。
 見事な問答です。内容的に優れているばかりでなく、形式的にも良く質問の趣旨を咀嚼しズバッと問題の本質に切り込んでいます。こういう問答が出来るようになりたいものですね。

芸者

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