5者のコラム 「芸者」Vol.165

悲しいストーリー・夢見るストーリー

水希「銀座№1ホステスの心をつかむ話し方」(こう書房)に以下の記述があります。

水商売の世界は堕ちていこうとすればいくらでも堕ちて行ける危険な世界。そのなかで「夢やビジョン」を持って働いていると、それだけで、しっかりとした軸を持った人間なんだと信頼されます。すると「悲しいストーリー」と同じでお客様が思わず応援して下さいます。夢を語れば思わぬところで夢実現のチャンスをつかむことも出来ます。私の夢は、ちょっと大きいですが、この世界から「心の病」をなくしたいと思っています。そして、カウンセリングというものを、日本に根付かせたいと持っています。(227頁)

弁護士も(堕ちていこうとすれば)いくらでも堕ちて行ける極めて危険な世界。それゆえ何らかの夢やビジョンを持って仕事していないと危ない。何をもって自分の「軸」とするかは人によって違いますが、何らかの「軸」を自分の中心に据えていないと結構危険です。弁護士の場合、他人の同情をひく「悲しいストーリー」など必要ありません。法律事務所を訪れる方々にとって、その弁護士が「今ある」ためにどれだけ悲しい出来事を経てきたかなど「どうでもよいこと」です。本当に必要なのは何をもって価値あるビジョンと認識し、なにを将来の夢と感じているかの「夢見るストーリー」でしょう。私の場合、仕事自体は与えられた目前の事件を淡々と解決することに重点を置いており、それをステップアップの踏み台にしようなどとは全く思っていません。ただ趣味として始めた「歴史散歩の観点」を何かの形でこの仕事に繋げられないかという夢の如きものは持ち始めています。地域全体の記憶(郷土史)をふまえて、地域全体のために繋がる何かを法律業務の中で生かすことは出来ないか?まだ具体的な形はみえていませんけど、それが私の「夢」ですね。