5者のコラム 「5者」Vol.166

自分の本当の姿

この年齢(60歳)になって少し自分のことが判ってきた気がします。私は子どもの頃から何かを他人から指示されるのが嫌いでした。他人が自分の行動の目的を決めるという雰囲気を感じただけで、その場から逃げ出したくなる感覚を持つ子どもでした。子どもなので何が自分にとって望ましいことなのか判っていたわけではないのです。自分の行動を決めていた要因は単なる<好き・嫌い>であり、趣味というか感覚的なものでした。どちらかというと「好きだから」この方向に行くというのではなく「嫌いだから」この方向には行かないという消極的な選択の結果として現在の自分はあるのかなと思っています。結果論かもしれないですが「目的」なんてものは事後的に構築された物語に過ぎず、人間行動の真の動機は本人にもよく判っていないことの方が多いような気がします。でも、意識レベルではよく判っていなかったことであっても、無意識的感覚レベルの行動選択は(事後的にみれば)「それが自分の本当の姿なのではないか」という気がしないでもない。
 このコラムも何か堅い目的があったのではなく「暇つぶし」のようなものとして枠組みをつくってみただけです。他の誰の指示があったわけでもない。意識的に「自分の若い頃の記憶や心情を記録しよう」とか思ったわけでもありません。偶然に与えられた「5者」という言葉が心に残っていて「この枠組みでなら自分も少しモノが書けるんじゃないか」という漠然とした意識で始めたのです。でも16年書き続けてきて思うことがあります。それは「自分はこういうことがしたかったんだ」という確信です。私は何かを書き続けるという作業が好きなんですね。この歳になってやっと判りました。子どもの頃は「還暦の自分」がこういう変な書き物をしているなんて夢にも思わなかったのですが、振り返ってみると「人生って不思議なものだなあ」と感じております。