5者のコラム 「易者」Vol.165

世界を正しく観る習慣・思い込みを相対化する

ハンス・ロスリング「ファクトフルネス」(日経BP社)は本能(思い込み)を乗り越えて客観的データ(事実)をもとに「世界を正しく観る習慣」を形成することを推奨しています。
    1 分断本能(世界は分断されているという思い込み)
    2 ネガティブ本能(世界はどんどん悪くなっているという思い込み)
    3 直線本能(世界の人口はひたすら増え続けるという思い込み)
    4 恐怖本能(危険でないことを恐ろしいと考えてしまう思い込み)
    5 過大視本能(目の前の数字が一番重要だという思い込み)
    6 パターン化本能(ひとつの例が全てに当てはまるという思い込み) 
    7 宿命本能(全ては予め決まっているという思い込み)
    8 単純化本能(世界は1つの切り口で理解できるという思い込み)
    9 犯人捜し本能(誰かを責めれば物事は解決するという思い込み)
   10 焦り本能(いますぐ手を打たないと大変なことになるという思い込み)
 以上の「思い込み」は相談者にも見受けられる傾向です。これらの思い込みの中には正しい推測も含まれています。学者がこれらの見解を支持している場合だってあるでしょう。ゆえに、これらの思い込みを「最初から否定する」のは良くない。しかしこれら「思い込み」が相談者の意思決定に悪い影響を与えている場合、弁護士は相談者に対し「事実に基づく判断」を促し、物事を客観的に・相対的に・漸進的に・複雑に・冷静に観るように促さなければなりません。ホットになっている相談者に対して<クールダウン>を求める作業とも言えます。勿論そのような良いアドバイスをするためには弁護士自身の「思い込み」を批判的に認識し「相対化する」必要がありましょう。

役者

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