5者のコラム 「役者」Vol.149

大人になるしか仕方ないじゃありませんか

2019年7月13日、サザンクス筑後で「ぱふぉーまんす集団センゲキ」による「こどもの一生」(@中島らも)を観劇しました。終了後、ロビーにおられた斎藤豊治先生(九州大谷短期大学)から、この芝居の脚本(中島らもさんの原作を少しアレンジ)を書かれた久保田りきさんを紹介されました。後日、私は久保田さんからこの作品の脚本をいただくことができたのです。読んでみると舞台を観た時の感じとは印象が違いました。以下は記憶に残ったセリフです。 

看護婦「女性なのにたくましいですね。そんなに強いのに、じっと我慢して社長のワガママを聞いていらっしゃるのですね。」柿沼「腕っぷしなんか、いくら強くたって。そんなもので太刀打ちできない力が世の中を占めてますからね。」看護婦「大人なのねえ。」
柿沼「あの社長の下に仕えてりゃね、子どもじゃいられませんよ。あの人自体が子どもでいられるのは金の力があるからですけどね、私にはないから。金の無い人間は大人になるしか仕方ないじゃありませんか。」

弁護士は「腕っぷしが強い喧嘩に強い力を持っている者」だと感じている人が多いのではと想像します。でも、そんなもので全く太刀打ちできない力の方が世の中の大半を占めています。場を与えられれば弁護士が腕っぷしを披露できるときだって稀にありますが、その適切な場を得るためには「腕っぷし以外の何か」を磨くしかない。そういう「大人の場」を得るためには不条理な世間で何とか生き抜いていくための「必死の演技」を必要とします。世間のイメージとは裏腹に弁護士の多くはそんなにお金を持っていません。お金を持っているのなら(依頼者や・相手方や・裁判所に振り回される)この仕事はやっていないでしょう、絶対に!弁護士は子どもじゃやってられませんよ!ホント。この仕事を続けていくためには大人になるしか仕方ないじゃありませんか(涙)。