5者のコラム 「役者」Vol.139

外国で制作された映画の感想2つ

「セザンヌと過ごした時間」。エクス・アン・プロヴァンスで同じ中学校を過ごしたセザンヌとゾラ。母子2人で貧しいアパルトマンに住むゾラはフランスの国籍さえ持たぬ移民の子。セザンヌは裕福な銀行家の息子。両者は親友だが夢の実現においては対照的だった。ベストセラーを連発し文壇の寵児となったゾラに対しセザンヌは画壇から無視されながら自分の芸風を追求し身なりも構わない。売れない画家を題材とする小説を書いたゾラと小説モデルが自分だと信じたセザンヌは決別。パンフレット後記を書かれている野口由紀氏は「男の友情ってめんどくさっ」と書かれている。ひがんだ男の嫉妬や出来る男に対するねたみはやっかいだ。ですが男である私の見るところでは(それ以上に)「女の友情ってめんどくさっ」という気がします。
 文化は中心ではなく周縁から生まれる。多くのスターが社会の底辺から生まれた。屈折した思いをバネに変えスターに登りつめた者こそ歴史に輝きを残す。そんな感想を抱かせる映画が「ボヘミアン・ラプソディ」。クイーンのフレディ・マーキュリー役をラミ・マレックが好演している。この作品の凄みは「栄光・受難・再生」というキリスト教的構図を背景にしつつクイーンの名曲を多数ちりばめた演奏シーンで往年のファンのみならず若者に聞くに堪える音楽を多数響かせているところ。特に「ライヴエイド」(20世紀最大のチャリティーコンサート)のシーンは1962年生の自分にとっては奇跡的であった。何万人もの観客のいるコンサート画像はエキストラのいるライブフィルムとCGを駆使して作り上げられたものだという。自分がバンドメンバーになったような感覚になる映像の凄みを見せ付ける監督の手法は素晴らしいものであった。