5者のコラム 「学者」Vol.163

凡人がするには良い職業

tanukiinu先生が「弁護士引退日記」でこう述べておられました。

100人理系の学生がいると、その中で真に理系のセンスがあるのはせいぜい1人か2人位です。私はセンスがないほうで、ただの学校秀才でした。このまま理系の方面に進んでも、人生はパッとしないことは確実でした。見切りをするべきと思い大学院を中退しました。理系の学問を学んだ時間と努力は無駄になり、将来の目標もありませんでした。他人の目には絶望的な状況ですが、若さゆえ、何とかなると考えていました。結局は法律を学び、司法試験に合格し、30年以上も弁護士をすることになりました。(略)
 弁護士という仕事は凡人がするには良い職業だと思います。音楽や数学のようなごく少数の人にしか与えられていない才能がなくてもできます。少なくとも私は運よく弁護士になることができ70歳まで続けています。青春時代のある時期に過去の努力に見切りをつけたことは貴重な決断でした。それは千両以上の価値があったことは確実です。

私は高校生のときクラスにいた本格的理系秀才の凄さを認識し、理系に見切りを付けて文転しました。大学では学者になる意思で多少勉強しましたが、ゼミで出逢った本格的文系秀才の凄さを認識し、自分に見切りを付けました。tanukiinu先生が喝破しておられるように弁護士という仕事は「凡人」がするにはとても良い職業です。司法試験制度は良く出来ていたので「敗者復活戦」を目指す若者が多く集まっていました。自分に見切りを付けた凡人が復活を試みる良い機会だったのです。そのような機会って「自由な社会」に絶対に必要なものだと思うんですけどね(涙)。

医者

前の記事

系統立てた態度教育
役者

次の記事

不合理な遺言と死者の葬送