5者のコラム 「学者」Vol.124

何故こんな簡単なことが出来ないの?

 中村修治さんはフェイスブック上でこう述べています。<4つ年上の姉がいる。小さい頃はオルガンの前で「何故こんな簡単なことができないの?」となじられ続けた。「猫ふんじゃった」すら弾けないワタシはいつも姉の標的であった。「何故こんな簡単なことができないの?」って聞くと、金玉が今も縮み上がる(笑)。上手くならない限り、何が下手なのか具体的には判らないのである。「こんな簡単なこと」と叱られている「こんな簡単」の具合など判らないのである。ヒトは出来るようになったことからしか学べない。出来るようになったことしか好きにならない。だから「何故こんな簡単なことができないの?」と下手をなじっても仕方ない。どうやったら簡単なことになったのか、を伝えてあげないといけないわけである。良い上司になるためには、簡単なことが出来なかった頃の自分を、いつも手本にしなくてはいけないのである。
 「学校秀才は良い教師になれない」。学校秀才は「こんな簡単なことが何故判らないのか」が判らないからです。叱られている生徒にとって「こんな簡単なこと」の具合など判りません。ヒトは出来るようになったことからしか学べないのです。弁護士の多くは幼い頃から優秀で、良い社会生活を送ってきた方々でありましょう。なので生き方が下手な依頼者に対して「何故こんな簡単なことができないの?」と感じる場面は多々生じることでしょう。しかし、それを言葉にしてはいけないんですね。それを自覚するためには簡単なことが出来なかった頃の自分を謙虚に振り返ることが不可欠です。そういった過去の自分をイメージできない程に優秀な弁護士さんは「何故、こんな簡単なことが出来ないの?」と責められている悲しい子どもに対する想像力を鍛えるべきでしょう。