5者のコラム 「芸者」Vol.86

事務所の資金繰りが危機に陥ったときの対処

前島憲司弁護士はブログでこう述べておられます。(15/2/1)
 

中小企業の経営の原則からすれば「目的を持って計画的に受ける融資」は健全な融資であり、むしろ経済原理からすれば理に叶っていることです。(略)日頃からもしもの場合に備えた考え方がないので「もしものとき」が現実的になった場合なす術もなく「後で填補すればなんとかなる」ということで「預り金を借用」ということになっているように思えてなりません。(略)「預り金の着服」という事態が生じた場合いつも対策として出てくるのが「倫理研修の充実」ということですが、明日の資金繰りに困ったような切羽詰まった状態ではかなり高度な倫理観や良心をもっていない限り悪心を抑えきるのは困難です。弁護士であっても生身の人間であり、そこまでの高度な倫理観を備えた人はどれだけいるのでしょうか。それより「資金繰りショート」に備えた対策やその啓蒙、金融機関や融資先とのお付き合いの仕方を教えることや信頼できる金融機関やコンサルタントの紹介、資金繰りが危ない場合に遠慮なく相談できる会の窓口を設けるなどの対策の方が実効性があると思います。(略)危ない事態が生じた場合の相談できる窓口やそれに備えた知識の啓蒙。そうすれば真面目で正義感あふれる弁護士が資格を失うことは少なくなるような気がします。

昔の弁護士会は「事務所の資金繰りが危うい場合の対処法」という問題意識をもっていませんでした。不祥事が起きたときは精神論で事が論じられました。が法律事務所も経営体ですから資金繰りに危機が生じた場合の実践的対処法を技術論的に検討する機会が不可欠です。日頃、そういう「技術」をこそ弁護士は他者に教示しているからです。今後の弁護士会運営に不可欠の視点です。