法律コラム Vol.12

継続的取引契約の解消

 継続的取引契約の解消については多くの裁判例があります。以下は私が被告側で整理したものです。原告は契約解消に「正当な理由」が必要と主張していました。

第1 一般的規範
 (川越賢治・別冊NBL19号「継続的取引契約の終了」参照)。
 1 期間の定めがある契約
 この場合には期間の満了により原則として契約は終了する。かように解しないと契約により期間を設定した意味はなくなるし、状況が変化しない限り一旦契約すれば永久に拘束されるという結論を導くことになり適当ではないからである。期間の定めがある契約で更新が為された場合には、更新後の内容について「原則と例外」を整理して考える必要がある。原則「一般に継続的取引契約は(賃貸借の場合と違って)更新拒絶の意思表示が為されなければ当然に更新されるというものではない」(福岡地判昭和39年3月19日)。契約が更新されたとしても、それによって期間の定めがない契約に転化されることはなく、同一内容で新しい契約が行われたもの(契約期間は従来の契約通りとする黙示の合意あり)と推認するのが相当である(東京高判昭和57年8月25日)。例外:約上は期間が定められているのに更新により期間の定めがない契約に転化する場合。かかる認定が為されるのは特殊なケースと思われる。この認定が安易に為されれば契約書により期間を設定した意味がなくなる。適当でない当事者との法律関係を永久に拘束する不当な結論を導く可能性がある(事業の効率性が求められる現代社会では許容されない)。
 2 期間の定めがない契約
 期間の定めがない契約も契約関係の終了は可能であるが、終了を主張する側からの終了原因事実の主張立証が必要になる。これには①合意解約②約定解約③法定解約があるが、多くの場合に問題となるのは②であろう。②についてはⅰ予告期間、ⅱ解除理由、ⅲ経済的弱者の保護という3点が問題になることが多い。ⅰにつき予告期間が短すぎると問題とされるケースがある。相手方にとってある程度の予測可能性(相当の期間付与)は必要であろう。ⅱにつき「約定解除においても合理的理由が必要だ」との主張について明示的に否定した判例がある。「代理商契約の解除について、民商法は何ら合理的理由の存在とその開示を要求していないし(民法651条・商法50条)委任契約たる本質に照らし、その解除に特段の理由を要しないことには相当の理由があるというべきであり、右理由は有償契約である場合にあたっても有償の故をもって修正される必要はない。本件委託契約を解除するのに解除の有効要件として解除理由を開示しなければならないと解すべき法的根拠は存しない」(横浜地判昭和50年5月28日)。ⅲにつき約定解除の規定が経済的弱者保護の観点から問題とされるケースもあるが、判例は公序良俗に反し無効とはしていない。
第2 本件の判断
 本件契約の終了原因は第1に「期間満了」による。継続的取引契約といえども更新拒絶の意思表示が為されなければ当然に更新されるというものではない。契約が更新されたとしても、それによって期間の定めがない契約に転化されることもない。単に同一内容で新しい契約が行われたものと推認するのが相当である。本件における最終更新日は平成○年×月△日であるから、これから1年の期間の満了日に終了する。第2に「解約申入れ」による。この条項は原契約にも存在しており、当事者間の本質的合意内容となっていたものと考えられる。解約申し入れに特段の理由は必要ではない。この規定は両当事者「相互に」出来るとされている本件の場合、解約申し入れの意思表示が存在しているので、これによって契約が終了する。第3に「解除」による。約定解除ととともに法定解除としての「解除」も十分に考えられる。いずれにしても「合理的理由」は必要ではない。上述のとおり民商法は何ら合理的理由の存在とその開示を要求していないし(民法651条・商法50条)このことが有償契約であること故に変質するものではない。十分な予告期間も設けている。

* 裁判所は原告の請求を棄却しました(確定)。

次の記事

不動産媒介契約と直接取引