久留米版徒然草 Vol.212
長塚京三さんだからこそ
映画「敵」(監督脚本・吉田大八)を拝見。原作をかなり忠実に映像化されている。むしろ映画でなければ表現できない料理や女性たちとの距離感の映像化が見事。原作(1998)との時間差により、細かい点を現代風にアレンジしている。だからこそ観客に素直に受け入れられる。
パンフレットを購入。長塚京三さんのコメントにしびれる。「フランス文学には高尚で取り澄ましたようなイメージが若干あって、そういうニュアンスを儀助に持ち込んでいる感じはしましたかね。ブルジョワジーでインテリ、専門領域の頂点に立って確かな自信にも充ちていた…はずだったのに、いや、だからこそ儀助は足元をすくわれて内面も崩れてゆく。ちょっといい気になって油断して生きてしまった、というのは残酷な言い方だろうけれども、どこか驕った面もあったのでしょう。」
長塚京三さんだからこそ渡辺儀助を演じ切ることが出来たのだと確信します。