法律コラム Vol.15

再生計画案の策定

ある株式会社の民事再生申立事件で作成した再生計画案の一部です。(久留米の木下隆一弁護士との共同によるもの。若干省略しています)

第1 破綻の原因分析
 1 金融機関の選別融資による資金不足
  今回の破綻の直接的な契機は、平成*年*月*日の手形決済資金(総額*万円を用意できなかったことにある。この原因は、近時の金融機関における融資先選別行動にあると評価できる。しかし金融機関側から見れば、これは経営失敗の結果であって原因ではないということになろう。したがって問題となるのは結果として失敗したと評価されるの中身は何かということになる。
 2 構造不況と対応の遅れ
  会社が苦況に陥った原因は利益の源泉であった土木建設業界の構造不況による売上の減少にある。しかし、これを会社破綻の原因と直結するのは正しくない。厳しいのはどの会社も同じだからである。経営責任の観点から言えば、この会社において重要なのは社会の状況変化を前にして積極的な行動指針の策定と実行が決定的に遅れたことである。経営者のリーダーシップが欠けていた。
第2 再生計画立案の基本方針
 1 総説
  当初はスポンサーによる再建も検討したが、適当なスポンサー候補が無く、結果として自主再建型となった。弁済は収益による長期分割弁済を基本とする。長期に渡る収益弁済になるので債務免除率算出の裏付けとなる収益計画の骨子も示すこととする。
 2 自主再建案の骨子
 (1) 資本構成の変更の有無
   スポンサーが存在しないため資本構成に変更を加えない。減資・増資は行わないし第3者への株式譲渡等も行わない。
 (2) 経営陣の構成と執務方針
  イ 旧経営陣の処遇
    経営責任を明確にするため代表取締役*は引責辞任した。同人の会社に対する損害賠償責任について再生裁判所に対し損害賠償査定申立を行い審理中である。ただ仮に決定が得られたとしても同人の不動産は全て金融機関の抵当権が設定されており遺憾ながら回収の見込みはない。
  ロ 新役員の選任
    新しい役員として次の者を選任した(略)。
  ハ 新経営陣の執務方針
    新経営陣は全力を挙げて営業力の強化・財務体質の改善に取り組む。業務改善の中で安定的な営業利益を確保し再生計画に定める義務の誠実な履行に努める。
 (3) 弁済方法
   収益による長期分割弁済を基本としつつ、手持ち資金の枠内で可能な限り、認可後速やかに一時金支払いを行う。
 (4) 免除率と弁済内容
   一般再生債権は元本及び再生開始決定日の前日までの利息・遅延損害金の合計額の**パーセントを**年間で分割弁済することを基本とする。但し、少額債権は免除率を比例的に低減する。
 3 免除率算定の趣旨
   上記債務免除率を算出するにあたっては①清算配当率との関係、②債務免除益課税との関係を総合的に考察した。以下、説明する。①予想清算配当率との関係・再生開始決定の日である平成*年*月*日で破産清算した場合の一般債権者への予想清算配当率は*パーセントである(詳細は略)。②債務免除益課税との関係・会社の顧問税理士事務所によれば、次期会計年度において計上しうる損金額の合計は*億*万円である。上記免除方法によった場合の債務免除益はこれを下回る。ゆえに本件免除方法においては債務免除益課税の問題が生じない(詳細は略)。
第3 収益計画の内容
 1 売上面
   一時的な売上減少はあったものの手続開始後は安定した売上を確保出来ている。利益率の低い他社製品の取扱を止め付加価値の高い製品を販売の中心に据え、経営資源の効率的集中に努めたため「利益重視」財務体質への転換は確実に進んだ。収益計画における月次売上は*月以後の現実の売上高に比し低い水準で設定しており堅い経営計画を立てている。
 2 経費面
   申立前に*名いた人員は現在約半分の*名となった。かかる半分の人間で安定した売上を維持している。*県*市所在の*営業所は平成*年*月*日に閉鎖した。全社をあげて経費削減に取り組んでおり、その効果として月別平均経費額は申立前の半分以下となった。なお管理コストの削減を図るため、価値が希薄になった知的財産権を必要最小限に限定する合理化も進めている。

* 本再生計画案は債権者集会で可決され、裁判所により認可されました。

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