5者のコラム 「5者」Vol.160

自信を持って歩めよ

ある著名進学校の国語先生がネット上で次のように書かれていました。

教員よりも頭が良い生徒が多い、そんな職場で働くのは緊張が絶えません。しかしこういうときには彼らから「うん、それで良い・自信を持って歩めよ」と頭を撫でられているような気がして、励まされる、みたいな良いこともあります。

弁護士の一部には「自分は依頼者より頭が良い」ような勘違いをしている人がいますけれども、それは視野の狭さにもとづく錯覚です。弁護士は自分が思っているほどには優秀でないし、依頼者は弁護士が思っているよりも明晰です。このことを意識しない弁護士はどこかで思わぬ失敗をするような気がします。多少なりとも「学び」を継続していれば判ることなのですが「自分を優秀と思っている人間」にロクなやつはいません。立派な経営者の方々はとても謙虚な印象を受けるものです。同様にホンモノの頭の良い方々ほど「自分は勉強が足りない」と思っておられます。そういう立派な方々が依頼者に多く含まれているという認識が弁護士には不可欠なのです(もちろん依頼者の「全て」とは言いません)。かように「自分より頭が良い依頼者が多い環境なのだ」という厳粛な認識をもつならば、そういう方々の前で仕事をするのは緊張が絶えないということになります。法律に関しては多少自分のほうが詳しかったとしても(それでメシを食っているのだから当たり前)経済・社会に関しては依頼者のほうが詳しいしセンスも良いのです(むしろ弁護士なる人種は「社会人的なセンス」に決定的に欠けていることが少なくない!)。そんなことをつらつら考えていきますと、多くの依頼者(特に顧問先)から長年にわたって仕事をさせてもらっているだけで「うん、それで良い・自信をもって歩めよ」と頭を撫でられているような気がして励まされるのです。がんばろうーっと。