5者のコラム 「学者」Vol.164

監査の仕事を行う観点

私は御縁あって久留米市の監査委員として職務を遂行しています。任期は1期4年間なので4年で終わるはずでしたが、引き続き2期8年間も監査委員の仕事をさせていただいています。同様に私は御縁あって学校法人久留米大学の法人監事の仕事も3期9年間務めています(今年6月で満了)。これらは地方自治体や学校法人の運営に縁がなかった私にとって刺激的な仕事です。
 監査委員や法人監事の仕事をしている弁護士が同じ問題意識を有しているのか否か判りませんが、私は平井宜雄「法政策学」(有斐閣)の構成に留意しながら監査をしています。
1 一般的な評価基準:①効率性基準・②正義性基準・③両基準相互の関係
2 法制度設計の基礎理論:①市場的決定にもとづく法制度設計・②権威的決定にもとづく法制度設計・③手続的決定にもとづく法制度設計
 監査は執行部の「お金の使い方」を第三者的にチェックすることを主たる任務とします。「正義性」基準は当然の前提です。それを踏まえて、更に経済的「効率性」基準を考えていくことが多いと言えます。プロセスの妥当性を問う「手続的合理性」を考えていくことも結構あります。
 法律の仕事をしている者は正義性基準を偏重する傾向にあるようです。確かに法律家として仕事に就いている以上、自分の存在意義(本拠)は正義性にあり判断を支える基盤は「市場」や「権威」ではなく「手続的正義」にあると思わされることが多々ありました。しかしながら政治や経済は生モノなので「効率性」を避けては通れません。したがって監査においては「公金が公益目的のため真に効率的に使われているのか」という観点がとても重要になります。弁護士の仕事として(個別の事案を超えて)こういう広い観点を得られたことは私の財産と言えそうです。