5者のコラム 「芸者」Vol.131

汝自身を知れ・相談力を高めよ

鈴木雅人「対人援助職のためのコミュニケーションスキル『相談力』入門」(中央法規)には以下の記述が見られます。とても参考になります。(194頁)
 

人間は色々・家族も色々・男女関係も色々なわけですから相談者がどんな価値観を持っていても、基本的にはそれを受け止めなくてはならないのです。少なくとも「現状ではそういう価値観を持っている」という部分だけでも。なぜなら相談者との信頼関係は相談者を受け止めることから始まっていくからです。そのためにも自分の人生や経験を振り返ってみるということが大切なのです。自分がどんな価値観を持っていて、どんなこだわりを持って生きているのかということが判らずに、その対策は出来ませんから。振り返ってみるとは自分の価値観やこだわりを言語化すること。言語化することで意識せずにいたものを意識することができます。

相談者が経てきた人生経験は自分と違います。価値観も違います。が相談者がどんな価値観を持っていても弁護士はこれを受け止めなければならない。少なくとも相談者が「現状こういう価値観を持っている」という部分は認めなければならない。相談者との信頼関係は相談者を受け止めることから始まっていくからです。そのため自分の人生や経験を振り返ってみることが不可欠です。自分の価値観を理解できずに他人の価値観を理解することは出来ませんから。自分の人生を振り返るとは自分の価値観やこだわりを「言語化すること」。言語化することで意識せずにいたものを意識することができますし、相談者の持っている価値観、これらを背景として産み出されている事柄の意義と問題点が見えてきます。これこそ弁護士が対人援助職のためのコミュニケーションスキルを高めるために不可欠なことです。「汝自身を知れ。」そして「相談力を高めよ。」