5者のコラム 「医者」Vol.13

妄想性人格障害と刑事弁護

妄想性人格障害の概念につき「ICD-10」は次のように述べます(医学書院)。以下によって特徴づけられる人格障害(F60・0)
a 退けられたり拒まれたりすることに過度に敏感であること
b ずっと恨みを抱き続ける傾向 侮られたり軽蔑されたりしたことを忘れない
c  疑い深いこと、体験を歪曲する傾向がしみこんでいて、他人の中立的あるいは友好的な行動を敵意あるものあるいは馬鹿にしていると誤解する
d 現実の状況に適合せず、戦闘的に又は執拗に個人的権利を意識すること
e 配偶者あるいは性的パートナーの性的貞節を正当な理由無しにしばしば疑うこと
f 常に自分を引き合いに出す程度に表れる過度の自尊心を抱く傾向
g 自分の周りに起こる出来事について「陰謀」など実証性のない解釈に没頭する
 人格障害者の脳に器質的異常はありません。精神医療による治療反応性がありません。彼らは生物学的には全く正常です。彼らには病識が無く、トラブルは全て他者に起因すると考えます。だから周囲の者は困り果てるのです。私は精神科医の次の説明を聞いたことがあります。「人格障害者は入院させても意味がない。彼らにこそ刑事罰が必要だ。彼らの人格上の障害は生物的要因ではなく社会的環境的要因から出ている。彼らの問題行動は強権的矯正施設(刑務所)でしか改善されない。」
 人格障害者の違法行動は弁解の余地がなく責任能力も肯定されやすいものです。人格障害者とどう向き合い、どう弁護活動をしていけば良いのでしょうか。