5者のコラム 「芸者」Vol.166

依頼者の欲望・自分の欲望

私は最初「芸者としての弁護士」を次のように描写しています(5者1)。
 客は欲望を抱いてやってくるが、欲望の全てを満たしていたら社会規範を逸脱してしまう。芸者にとり重要なのは「社会のルールに沿って客の欲望を上手に満たすこと」だ。そして「その対価として客から金をもらい自己の金銭的欲望を満たすこと」だ。弁護士は客なしには成り立たない。けれども客と癒着しすぎたら自己の存在意義を保てないのである。(2006/9/17)
 上記記述に対する返答を考えます。私は社会のルールに沿って客の欲望を上手に満たすことが出来たのであろうか?サービス業としての弁護士という言葉には未だに慣れないのですが、依頼者は自分の望む解決(結果)を欲して事務所を訪れるわけですから、その希望を「法の定める枠の内で」実現するのが弁護士という仕事です(内容は法律コラムで紹介)。弁護士資格を喪失することなくルール内で結果を残せてきたことは私の誇りとするところです。私は仕事の対価を得て自己の金銭的欲望を満たすことが出来たであろうか?私は依頼者の期待する結果を残せた報酬として少なからぬ金銭的対価を得て事務所を維持し自身の生活を享受してきました。幸い家族に恵まれ地元の繋がりにも恵まれ幸福な弁護士人生を過ごさせてもらっています。私に相談をして下さり依頼して頂いた多くの皆様のおかげです。私が依頼者の人生を支えてきた面も多少あると思いますが、それ以上に依頼者の方々に自分の人生を支えて頂いたんだなと本当に感謝しています。私の弁護士生活も30年になりました。振り返れば私もそれなりの<芸者>になってきたのかなあと思っています。

易者

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