5者のコラム 「易者」Vol.66

みんなが憧れる仕事?

以前フェイスブックに次の書き込みをしました。>修習生に対する給費制復活を目論む日弁連のスローガンは「金持ちしか法曹になれない」のは駄目だ、というものだ。このスローガンは法曹の仕事を「みんなが憧れる良い仕事」だと前提し、金持ちが資金を使ってその「良い仕事」を独占するのは良くない、という主張になっている。しかし法曹の仕事はもともと昔から差別され・嘲笑の対象となり・恐れられていたのではなかったか?難儀な仕事だからこそ、これを必要とする社会は法曹の金銭的待遇を良くし、社会的イメージの向上に努めたのではなかったか?
 私は法師陰陽師を枕にして弁護士に対する差別意識を論じたことがあります(06/12/16易者3)。民間において「法」を扱う弁護士は尊敬性と被差別性という両極端な属性を帯びることが多いのです(09/11/25易者32)。汚いものに接して大金を得るのは差別される典型的属性です。アメリカで弁護士は「アンビュランスチェイサー」と揶揄されています。刑吏に対する差別はヨーロッパにも存在します(@阿部謹也)。日本でも「三百代言」の蔑称を使う人がいますし、新聞記事に法曹への差別意識(世間知らずの裁判官・権力の犬としての検察官・金に汚い弁護士など)が含まれていることも良くあります。世間の人は法曹に対して結構冷たいのです。裁判官・検察官を含む法曹は難儀な仕事です。だからこそ、その存在を必要とする社会は法曹の待遇を良くし、社会的イメージの向上に努めたのです。実務法曹の仕事を最初から「みんなが憧れるもの」と考え、金持ちがその「良い仕事」を独占するのはいけない(貧乏人にも良い仕事を分け与えよ)と主張して、庶民のルサンチマン(ねたみ)に訴える日弁連のスローガンは方向性を誤っていると私は考えます。

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