法律コラム Vol.110

特別縁故者への財産分与

財産管理事件のうち不在者財産管理人の他に用いられるのが相続財産管理人です。民法は「相続人のあることが明らかでないときは相続財産は法人とする。」と定めます(951条)。法人はこれを管理する誰かがいないと権利義務関係を処理することが出来ないので利害関係人の請求により相続財産管理人を選任します(952条)。相続人の捜索(958条)が行われても相続人が見当たらない場合、その財産は最終的に国庫帰属となります(959条)が、家庭裁判所は「被相続人の療養監護に務めた者等の特別縁故者」に相続財産の全部または一部を与えることが出来るとされています(958条の3)。以下は私が相続財産管理人選任を申し立てた後、裁判所に申立人を特別縁故者として相続財産の分与を求めた申立書の一部です。

被相続人は平成*年*月*日に死亡したが相続人が全て死亡していたので被相続人の遺産を処理することが出来なかった。申立人は平成*年*月*日に御庁に対し相続財産管理人の選任を申立て同年*月*日の審判により*弁護士が選任された。御庁は相続財産管理人の申立により相続人捜索の公告をした。令和*年*月*日、公告期間が満了したが権利を申し出る者は存在しなかった。申立人は被相続人が*病院において長年にわたって医療を受けるに当たりキーパーソンとして面倒を見てきた。大学病院への献体手続きや市営住宅の退去の手続も行った。これを無償で行うどころか*万円を立て替え支払うまでしている。うち*円は*病院の中央会計から返済を受けているが、残債務は精算未了である。申立人はこれが相続債権として認められると考えていたが、相続財産管理人より「疎明資料不足で認められない」と連絡があった。しかし少なくとも申立人が特別縁故者にあたることは明確である。よって本件において管理人報酬支払い後の残余財産がある場合には特別縁故者として申立人に分与されたく本申立をする。

* 家庭裁判所は上記申立を認め、相続財産管理人への報酬決定分を支払った残額の全てを特別縁故者としての申立人に分与する旨の決定をしました。

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