法律コラム Vol.93

有料サイト掲載への不当勧誘

ネット社会の浸透とともに有料サイト掲載への勧誘が激しさを増してきました。以下は「3週間だけ求人広告の無料掲載しませんか」との執拗な勧誘をし3週間の期間ぎりぎりに解約書式を送付して、書式に従って解約通知書を送っても「期限切れ」と論難し有料契約の請求書を送付する悪質な商法の被害者(法人)から依頼を受けて送付した内容証明郵便です。

 本年*月初旬、*の職員*は貴方より求人キャンペーンの電話を受け「3週間だけ無料で掲載しませんか」と執拗な勧誘を受けました。返信しないでいると毎日貴方から勧誘の電話があり、*は根負けして3週間は無料という名目で*月*日に申し込み書類を送付しました。送られてきた規約には「3週間以内に解約の意思が当社または当社の代理店に到達する必要があるもの」とされ「具体的な手続は別途案内する」とされていました(書式に従わなければ解約申出を受理しない趣旨)。当然ながら熟慮期間の意味を考えれば、満3週間になる期限の相当前に当該解約手続の書類が来なければ意味がありません。が実際は貴方の「解約通知書ご送付のご案内」なる文書は平成*年*月*日(期限1日前)に作成されており、この文書が東京都から福岡県に向けて郵送されているのですから、当方に到達するのは「無料掲載終了期日ならびに解約通知書ご返送期日」の当日平成*年*月*日となることが当初から仕組まれていたものと考えるのが自然です。上記文書が当方に配達された*日、*職員は*外で別の用件をしていたので本件の対応は翌日とならざるを得ませんでした。*は受領後速やかに*月*日付で解約申請書を貴方に送付しています。もし*が*日に在席しており速やかに解約書面を発送していたと仮定しても、*日午後*時*分に受領した解約書面を使い東京に返送したら貴方に届くのが*月*日以降になるのは明白です。にもかかわらず貴方は*月*日付で「*月*日で無料掲載期間が終わった」として金*万円及び消費税の請求書を送付してきています。以上の事実に鑑み当職は本件請求の支払意思が無いことを通知します。解約通知に別途書式を要求しておりながら書類を期限日ぎりぎりに到達させるように仕組み、対応の一瞬の遅れにより有償契約成立と見なす貴方のやり方は正当なものではありません。本件は同じ手口で反復継続的に行われている気配が感じられます。法に即して言えば本件契約は解約されています。予備的には公序良俗に反し信義則にも反します。貴方が請求を維持するのであれば当職は何らかの対抗的手段を執ることを考えております。当方に貴社のサイトへ掲載を継続する意思はありませんので当方の部分を削除するよう要求します。

* この書面送付で諦めるかと思っていたところ、8月30日、先方(個人)は東京地裁に対し提訴してきました。当職は答弁書と書証を提出し反論しました。法的構成は第1に「期限徒過の主張適格の不存在」、第2に「公序良俗違反・信義則違反」です。第1回期日前に原告から取下書が提出され(10月4日)当方も同意書を出したので訴訟は終了しました。
* これで終わったかと思いきや原告側は10月26日「原告を個人から法人に変更して」更に提訴しました。前訴の状況も記した答弁書を出しました。原告は11月14日再度取下書を提出しましたが頭にきたので「取下げには応じない。請求棄却を求める。」意見書を出しました。裁判官から「この原告に関しては複数の事件が係属しており裁判所も注意している。原告も反省しているようなので和解出来ないか?」と電話がありました。電話会議で和解案が協議され12月18日に次の和解が成立しました。「①原告と被告は原告が被告に対し主張していた債務は存在しないことを確認する。②原告および利害関係人(最初に提訴した個人)は被告に対し第1項の被告の原告に対する債務が存在することを原因とした訴えを提起しないことを確認する。③原告は原告のウェブサイト上に掲載した被告の求人情報を直ちに抹消するものとする。④原告は被告及び被告担当者に対し、本件訴えによって手続的な負担が生じたことについて、遺憾の意を表明する。⑤原告・被告および利害関係人は、原告と被告、被告と利害関係人の間には、本和解条項に定めるものの他に、何らの債権債務もないことを相互に確認する。⑥訴訟費用および和解費用は原告の負担とする。」東京地裁に出廷すること無く当方の言い分を貫徹することが出来て良かったです。

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