5者のコラム 「医者」Vol.136

拡大自殺の危険性・措置入院させることの是非

刑法上、自殺は犯罪ではないが他人が関わると犯罪となる。自殺が犯罪とされていないのは究極的な人間実存に関わるからだろう。しかし自死に際し他人を巻き込むのは止めて欲しい。自死は自由の範囲に属するかもしれないが「他人を巻き込んで死ぬ自由」など存在しない。
1 特に何も判らない子供を巻き込むのだけは絶対に避けて欲しいですね。
2 他人を巻き込み自殺するのを「拡大自殺」と言う精神科医がいます。日本の無理心中の多さは際立っていますし一神教圏の自爆テロは拡大自殺の1種かも。アメリカの銃乱射事件や日本の秋葉原事件なども拡大自殺ではないか。彼らには「自傷他害のおそれ」が認められ措置入院の対象となるはず。が未然に発見することは不可能でしょうね。
3 ↑措置入院がやり易くなり過ぎるのも別の問題が生じますからね。
4 ↑そうです。こういう事件があると精神科医の責任が問題とされる場合がありますが精神科医が拡大自殺を予見することは(通常)不可能です。
5 措置入院の場合,その精神障害のために,そのおそれがあること(多くの精神保健指定医は「心神喪失」と概ね同義と考えている)が必要になりますので「世を儚んで」とか「怒りを世間に向けて」というような場合(一応の理解可能な動機がある場合)には該当しないことになると考えます。
6 ↑拡大自殺を企てることが「一応理解できる動機」だとは私には思えません。患者から拡大自殺の意図をほのめかされたら精神科医が医療保護入院を求め(拒否されたら)職権で措置入院の要請をすることはあり得ることだと私は考えます。