5者のコラム 「学者」Vol.32

他者の目を意識すること

裁判官Nonさんは「かけ出し裁判官Nonの裁判取説」でこう述べています。

横柄で自分が全て正しいと言わんばかりの裁判官が多いか? 正直、私が修習生の頃や一緒に仕事をしてて、そんな裁判官を見たことはありません。(略)いろんな裁判官やいろんな弁護士を見れるのは修習生の頃の1年だけ。弁護士になればいろんな裁判官を見れるけど、他の弁護士がどう仕事をしてるのか、なかなか見れないと言います。裁判官になれば、いろんな弁護士を見れるけど、他の裁判官がどう仕事をしているのか、なかなか見れない。

自分が他者を見ていると言っても、それはその人の活動のごく一部に過ぎません。他者が自分を見ていると言っても、それは全体として自分のごく一部に過ぎないのです。ある人の印象を見定めるのは複数回付き合ってからでないと危ないと感じます。何故なら最初の局面におけるその人の印象は、その人の多くの要素における1つに過ぎないからです。私と交渉や訴訟の相手方となった弁護士さんにとって私の印象はその事件のみで形成されることでしょう。しかし、その1件は私が持つ多数の事件のひとつに過ぎません。逆もまたそうで当該事件は相手方弁護士さんの持つ多数の事件のひとつに過ぎないのです。個別事件の印象を安易に一般化してはいけないと(自戒を込めて)思います。私は時間に余裕がある限り法廷には少し早めに行くようにしています。自分の順番が後であったとしても前の人の弁論のやりとりから学ぶものは多々あるからです。自分の訴訟で厳しい訴訟指揮をしているように見えた裁判官が他の事件では優しい訴訟指揮をしていたり良い印象を抱いていた他の弁護士さんが別の事件では筋の悪い事件を平気な顔で受任していたりします。自分が関わっていない他の法曹の訴訟活動を見るのは意識しないとなかなか出来ないことです。裁判官は他の裁判官がどう仕事しているのかなど、なかなか見れないものでしょうね。

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