5者のコラム 「芸者」Vol.151

周囲への穏やかな気持ちを持つ

 あるバーの経営者の方が次のように自分の苦労話を書いておられます。

経営者ではない家族や古い知人とも徐々に話が合わなくなってきます。経営者の悩みや苦労は経営をしていない人には分かるはずもなく愚痴る場面もありません。また逆に経営をしていない人の悩みや苦労にも疎くなってきますので良い聞き役にもなれません。更に「いいじゃん、社長なんだから…」とか「人に使われていないんだから自由だよなぁ」等、一寸刺激的な言い方をされてしまうケースも多くなり、その中で立場を失っていきます。これは仕事の話を基本的にしないことで周りとの人間関係をどうにか保つ事はできそうです。大変なのは経営している人だけではないですし、子供だって会社員だって皆厳しい社会の中で戦っています。そう考えて、穏やかな気持ちで人々に接することがプライベートでも大切だったりします。

 独立して仕事している者の悩みや苦労を独立していない人が判るはずありません。愚痴る場面もありません。当然です。「いいじゃん弁護士なんだから」とか「人に使われていないんだから自由だよな」と羨望の言葉をかけられるのも(他人にこの職業の辛さ・苦しさが判るはずもないので)別に構いません。ただし引用文がこういう悩みや苦労を「家族や古い知人と徐々に話が合わなくなってくること」に直結させている点は共感できない。バーの仕事は酒をつくることだけではないんだから。愚痴を話したい客の「良い聞き役になること」が重要な(最も大切な)仕事なのです。もちろん、この経営者も判っています。穏やかな気持ちで人々に接することがプライベートでも大切だと認識しているからです。そう、厳しい仕事の中であっても、むしろ、であるからこそ周りの人に対する穏やかな気持ちを息長く持続していくことが「バー」においては最も重要なことなのです。

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