性的被害の慰謝料相場
女性の性的被害に関する慰謝料「相場」に関して裁判所に対し問題提起をした準備書面です(大幅補正し抽象化)。地裁裁判官の認容した賠償額があまりに低かったので控訴した時のものです。
損害賠償請求訴訟における損害額の認定は、裁判所の裁量の幅が大きいだけに実務上問題点が大きいとされてきた。特に名誉毀損において認定される慰謝料の額が小さすぎ実際上は「違法行為を行った者が勝ち」といった風潮を生み出していた。かかる社会的批判を受け近時裁判所にも見直しの契機が生じている(平成13年5月17日開催「損害賠償実務研究会」判例タイムズ1070号4頁参照)。
見直しの必要性は強姦・強制猥褻・ストーカー・セクシャルハラスメント等の事案にも該当する。従来の裁判例は強姦ないしこれに準じる事案においてすら慰謝料を300万円程度しか認めておらず、このことが被害者保護を極めて劣悪なものにしてきた。法的手続に訴えることでプライバシー侵害の危険性が増すのに慰謝料額は交渉段階より低くなるのでは、被害者は何のために裁判所に救済を求めるのか判らない。かかる背景事情の下に被害者の依頼を受けた弁護士が(何らかの交換条件を付けた)訴訟外の示談を強いられているケースも少なくないと思われる。かかる議論をすると「日本の民法は懲罰的慰謝料を認めていない」などという反論が聞かれる。しかし、これは論点を外している。問題は「被害者が受けた損害を慰謝するのに充分な金銭的補償はどれくらいか」という実質的問題なのであり懲罰的慰謝料を科すのが適当かという形式的な問題ではない。
* 地裁は損害額を250万円(弁護士費用25万円)しか認めませんでしたが、高裁は500万円(弁護士費用50万円)と大幅に増額しました。慰謝料評価の見直しによるものです。

