2024年読書で最も印象的
2024年の読書で最も印象的だったのは「源氏物語」。私は高校生の時に理科系で古文の知識がないため(授業はあるも関心なし)読んだことが無かった。大河ドラマの進行にあわせて読み進めた。テキストは角川ソフィア文庫:ビギナーズクラシックス。要約・現代語・原文の順番なので判りやすい。参考本は三田村雅子:NHK100分で名著ブックス。副読本は酒井順子・瀬戸内寂静・俵万智・漫画で読む古典など。特に三田村本は構造分析が為されていて非常に読みやすい。1000年前にこれほど重厚な物語を構築するとは!紫式部さん凄すぎます。(以下、議論)
1 源氏が須磨に行った頃から話に広がりが出て、宮中の人達も楽しみだったろうな。
2 ↑下降から上昇に転じるところよね。昨今流行りの神話分析(キャンベルなど)でも主人公は「いったん外に出て帰ってくることで真の聖性を得る」のよね。物語の構造が見事。更に「若菜」以降の人間的な苦悩の物語が素晴らしい。よくぞこれほどの深みを形成出来るものよと感心。
3 ↑登場人物の心の描写が深いですね。宮中の女性たちも頷いていたんでしょうね。
4 ↑多くの女性たちの中で特に「紫の上」の造形が素晴らしいと思います。
5 田村隆「源氏愛憎」角川ソフィア文庫も秀逸。時代により源氏の読み方は全く異なる。
6 最初は単なる浮気話かと邪心を抱いていたのだが、ちゃんと読むと主人公は関係をもった女性たちの面倒をみているんだよね。二条東院(花散里・末摘花)、六条院の「春」(紫の上・明石の姫君・女三宮)「夏」(夕霧・玉葛)「秋」(秋好中宮)「冬」(明石の君)。
7 「漫画で読破」の解説は「光る君へ」の脚本家:大石静さんが書いています。3つの密通を強調するからこそ4つ目の密通(式部と道長の密通)を追加してドラマにしたかったのでしょう。
8 参考図書として河添房江『紫式部と王朝文化のモノを読み解く』(角川ソフィア文庫)。香、唐物、紙といった小道具にスポットを当て興味深い読み物になっています。山本淳子『古典モノ語り』(笠間書院)。牛車、築地、几帳といった大道具的なものにスポットを当てたものです。
9 ↑先生は全文を読破されたんですよね。ホント凄すぎます。
10 ↑全文読んだといっても意味が分かるわけではなく、ただ「原文の雰囲気を味わう」という程度のものです。岩波文庫の新版は校註が充実していて6〜7割は現代文を読んでいる感覚です。