5者のコラム 「芸者」Vol.21

風俗嬢の上層と下層

清水草一「港区ではベンツがカローラの6倍売れている」(扶桑社新書)はこう述べます。

貧乏人が常連客となることなどまず不可能なそうした高級店のソープ嬢は容姿が端麗であるばかりではなく一流の世界で生き抜く顧客達の要求レベルに見合った知性や教養・奉仕精神が必要となる。人間性も磨かれていなければ一流の顧客達から連続して指名を受けることは出来ないため人間として女性として質の高い緊張感のもとに仕事をしているのだ。(略)一方、風俗界の最下層に位置するのが、特に目指すものもなく、ただなんとなく、あるいは借金などでやむにやまれず風俗嬢を続けている女性たちだ。(略)明確な目的も何もなく、そんな些細なきっかけでこの世界に堕ちてしまった女性は収入はともかく自分に対する自己評価が限りなく低い。つまり精神的に最下層に生息せざるを得なくなってしまうのだ。彼女たちはプライドを持てないでいるがゆえに心ない客からの侮辱的な言動や態度に傷つきやすく、さらなる自己嫌悪に陥りながら生活維持のためにやむを得ず続けている。

弁護士業務は仕事にプライドを持ち、それなりの「知性」や「教養」や「奉仕精神」を持ち続けていないと、とてもやっていけない仕事です。最下層に追い込まれた弁護士は心ない顧客や相手方からの侮辱的な言動や態度に非常に傷つきやすい。この状態は極めて危険。急性期症状としては依頼者や相手方とのトラブルがあげられます。心に余裕がないと人間関係の軋轢を上手に受け流すことが出来なくなります。理不尽な言いがかりには毅然とした態度を取ることが求められます。懲戒請求を恐れて理不尽な言いがかりに屈してはいけません。慢性期症状としては精神のバランスを壊し日常生活に支障をきたすことがあげられます。慢性期症状を自覚する場合は精神科医に相談すべきです。森田療法の知見によれば「世間からの隔離」だけで相当の効果があります。

学者

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