5者のコラム 「医者」Vol.117

薬物に関する話題3つ

春の七草で馴染み深いセリや猛毒のハブの毒から生活習慣病薬が開発された。ジャングルの地面からは炎症を抑える薬が、牧草のクローバーからは血液を固まりにくくする薬が、庭に生えていた植物や丘に生えている樹の成分からは抗ガン剤が生み出された(大和田潔「知らずに飲んでいた薬の中身」祥伝社新書4頁)。薬のヒントって意外なところにある。

20世紀になって意識状態を変える薬が合成品として作られるようになった。最初のものはアンフェタミンであった。第2次大戦中にアンフェタミンは兵士たちの警戒心と覚醒状態を長時間保つための興奮薬として新たな役割を担うことになった。爆撃機の乗組員が長時間の飛行作戦に参加するときなどに使われたのである(レスリー・アイバーセン「1冊で判る薬」岩波書店22頁)。旧日本軍でも大量のヒロポンが使われました。平常心において人間は殺傷行為など容易に出来ませんから。

医薬品の歴史を変えたペニシリン。その存在を認識し命名したのはフレミング博士。が博士は薬剤化を諦めていました。これをわずか1年で医薬品として大量生産できるようにしたのがフローリーとチェイン。フレミングの発見を医療現場で使えるようにしたのは両名の活躍によるもの(両名がいなければフレミングも世に出ていない)。が、マスコミはフレミングだけを神のごとく扱い両名を無視しました。これは両名がマスコミ嫌いで記者会見などを開かなかったことによるものです(山崎幹夫「薬の話」中公新書170頁)。フレミングの神話はマスコミが作ったのですね。