5者のコラム 「5者」Vol.23

サービス業者の愚痴・対人職の受難

有限会社ハギジン企画「お客様は悪魔です」(かんき出版)は顧客の理不尽な行動に対するサービス業側の愚痴を集めています。いくつかを紹介します。
1 「いい部屋にしてね」。だから値段によるんだってばっ。(温泉観光ホテル予約係)
2 触るな、舐めるな、ゲロ吐くな。チンチン出すな、閉店時間にゃ帰ってくれ。(ホステス)
3  「子連れでいける店がないよね」と言う前に店に行くマナーを取得しろ!ここは子供の遊び場じゃない・ここはあんたんちの居間じゃない(喫茶店経営)
 「専門」職でなくとも「対人」職には本質的に受難が存在します。対人専門職の受難を特殊なものと考えるのは専門職側の思い上がりかもしれません。これまで専門職はその専門技術の故に倫理性のヴェールが存在したため受難を免れていただけなのでしょう。専門職の者も人格者たる役割を律儀に演じてきただけなのかもしれません。専門職に対する市民の敬意が消失し始めているのは自己中心的な市民だけに原因があるのではなく倫理性への期待に応えきれなくなった専門職の側にも原因があると言えそうです。対人専門職の者の不祥事が日常的に報じられるようになって久しいものがあります。近時、弁護士のサービス業たる性格を強調し倫理性を捨てる動きが見られますが、両者は矛盾するものではありません。弁護士はサービス業であるとともに高い倫理性をもつ専門職であることを自覚し人格者たる役割を演じ続けるべきだと思います。専門職に対する市民の敬意が消失し始めているのは倫理性への期待に応えきれなくなってきた専門職の側にも原因があります。倫理性への期待に応える地道な努力こそが対人専門職の受難を避けるための(一見遠くても)近い道なのです。

易者

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