5者のコラム 「医者」Vol.112

この医師に執刀して欲しい

 野田一成「患者は知らない医者の真実」(ディスカバー携書)の記述。

週刊誌やインターネットで有名な医師を調べてきて「この医師に執刀して欲しい」と要望される患者さんもいます。この場合は指定された医師宛に紹介状を記載し持参してもらいます。ただし、その有名な医師が手術にどれくらい関与するのか私には判りません。仮にその医師の手術を受けることが出来たとしても初回の診察を受けるまで相当期間待たなければならないかもしれません。簡単な手術であれば一部分のみ有名医師が行い大部分の処置は若手医師に委ねていることも珍しくはありません。また指導医的立場で観察するのみで全ての過程を部下が執刀することもあり得ます。ですから、その医師に執刀してもらうというよりはその医師の下で手術を受けるのだととらえた方が良いのかもしれません。

世の中にはインターネットで有名弁護士の情報を調べてきて「この弁護士に紹介して欲しい」と要望される相談者がいるようです(私は全く経験ありませんけど)。この場合、指定された弁護士に紹介状を書いてもらって持参しても、その弁護士が実際に相談に立ち会う可能性は低いでしょう。仮にその弁護士の相談予約をすることが出来たとしても初回相談まで相当期間待たされるかもしれません。大都市の大手事務所の場合、簡単な業務であれば、一部分のみを有名弁護士が行い、大部分の業務は若手の勤務弁護士に委ねていることが珍しくありません。有名弁護士は名前を出すのみで、全ての過程を勤務弁護士が担当することもあります。ですから「この弁護士に紹介して欲しい」と要望されても、その弁護士に担当して貰うというより、その有名弁護士の下で若手勤務弁護士の法律業務を受けると捉えた方が良いのです。これは悪口でも何でも無く、クールな「現実」です。有名弁護士や大手事務所というのは、そういうやり方でしか仕事をこなせないのです。

5者

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