5者のコラム 「学者」Vol.55

警察との距離感

京都大学で受験者が問題を知恵袋サイトに投稿する事件が発生しました。被害届が出されたため受験者は逮捕されました。この処置に茂木健一郎氏は違和感を表明します。
 

京都大学が被害届を出し「偽計業務妨害罪」でカンニングをした学生が逮捕されるに至ったことに強い違和感を覚えるものである。その理由の第1は「大学の自治」「学問の自由」にある。入学者をどのように選考するかという問題は「大学の自治」の根幹にかかわるものと考える。どのような資質を持った人から大学を構成するかということは大学における学問・研究・教授の基礎をなすものであり大学がもっとも大事にしなければならない点である。1952年の東大ポポロ事件に見るように、かつて大学の自治はもっと大切にされ、さまざまな議論があったと思う。今回の事件において京都大学の関係者が「被害届け」を出してしまったことは「大学の自治」の点から疑問である。日本の大学が大きく変質してしまったことを感じる。第2に教育者の立場からの配慮に欠けているという点である。19歳の予備校生は追い詰められていたのだろうと推測する。「心療内科」の情報を求めていたという報道からも心的に不安定な状態にあった可能性が高い。京都大学にあこがれ志願してきた学生が心の弱さから「カンニング」をしてしまった。その時に大学側がとるべき対応は入試で不合格にすると同時に前途ある若者が未来に向き合えるような配慮をすることではないか。「偽計業務妨害罪」という罪名の下に「警察に突き出す」ことが大学人のやるべきことだとは私は思わない。

 かつて大学には学内問題に警察が介入することを避けようとする自治意識がありました。憲法上「大学の自治」「学問の自由」には重要な意義が与えられています。商業主義の滲透と同様、警察権力にもワキが甘くなってしまった現代の大学の問題点が浮き彫りになったように思います。