5者のコラム 「医者」Vol.90

死に直面した者の心理過程

 エリザベス・キューブラー・ロス「死ぬ瞬間」(中央公論新社)によると「死ぬこと」に対する末期がん患者たちの心の動きは次の5つの過程に沿うようです。
【第1段階:否認】
 自分が不治の病であることを知ったとき多くの患者は不安と恐怖からそれを否認する。一時的自己防衛であり、本能的に自分の心を守ろうとする反応だ。
【第2段階:怒り】
 やがて新たな反応が生じてくる。「なぜ自分なのか」という疑問とともに怒りや妬み・憤慨が表出する。怒りはあらゆる方向に向けられ周囲の対応は困難になる。
【第3段階:取り引き】
 やがて「避けられない現実」を先延ばしできないものかと交渉を試みる。善行の報酬として願いを叶えてもらおうと神と取り引きする。「教会に奉仕する」「延命してくれるなら自分の体を科学に提供する」と約束する患者が大勢現れる。
【第4段階:抑鬱】
 もはや自分の病気を否定できない状況になってくると、苦悩や怒りは大きな喪失感にとって代わる。治療による経済的負担や職を失うことなどが抑鬱状態を招く原因となる。この時期、周囲の人間は励ますよりも「黙ってそばにいること」が望まれる。
【第5段階:受容】
 これまでの段階において周囲から何らかの助言が得られれば患者はやがて諦めの境地に至り自分の死を運命として受け入れられるように変化する。(引用終)
「人の死」に接する機会が多い法律家も認識しておくべき大事な心理過程ですね。

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