5者のコラム 「医者」Vol.57

信じることで生じるチカラ

 高田明和氏は「うつ病克服の最強手段・言霊療法」(NHK生活人新書)でこう述べます。

米国のジョンズ・ホプキンス大学のリー・パーク博士らは精神科の外来患者15人に薬瓶を渡し「これは全く活性を持たない砂糖の錠剤です。しかし、多くの患者さんは1日3回毎回1錠づつ1週間飲み続けると症状が改善します。1週間したらチェックのためにまたおいでください。」と告げたのです。すると、1週間後に再受診した14人の患者のうち13人の症状が良くなっていたのです。面白いのはこれが砂糖の効果だと理解していた人に効果が高く、医師の言うことが理解できなかった人には効果があまり無かったことです。この際、医師が「これを飲むと多くの人が良くなったと言っている」という点が大切です。患者は「この錠剤は特別で多くの人にとって効果があるはずだ」と思うのです。ここで重要なのは、患者が医師の言うことを信じているということです。そのために医師が本当のことを言っていると思うのです。まさかプラシボの効果を調べるために言っているとは夢にも思っていないのです。このことは、言葉というよりも、その言葉を使っている人を信じているということが、自分の心を変え、その影響で体が変わるということをよく示していると思います。心を変えるのは言葉ですが、言葉は「信」があるから効果を示すのです。 

 信頼を得ることが大事だと私たちは先輩から叩き込まれてきました。それは預り金に手を出さない・依頼者に何でも隠さずに話して貰うなど消極的意味で語られてきたものです。しかし、高田氏の議論を下敷きにすると、弁護士に対する依頼者の信頼の意義は積極的なものです。弁護士の言葉が事案解決の力を持つか否かは、依頼者が弁護士に向ける「信」によって決まるということなのです。

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