中小企業支援センター
日弁連は中小企業の支援を、4月から精力的に行っています。その一貫として筑後部会では10月15日に久留米市役所と久留米商工会議所の参加を得て研修会を開きました。
日弁連は本年4月より中小企業支援を本格化しております。本日の研修会はかかる取り組みの一貫です。その意義を考えるための具体例として(久留米では決して中小企業ではないのですが)平成10年のアサヒコーポレーション会社更生事件を考えてみます。当初東京の経営陣と弁護士さんは破産申立を検討したように私は聞いています。たしかに東京の感覚ではアサヒコーポレーションは数多くある靴メーカーの1つに過ぎないのかもしれません。しかし、久留米におけるアサヒコーポレーションは地域の政治経済に極めて大きい影響力をもつ存在です。かような地域経済への影響を理解した方々が本社を急遽久留米に移転し福岡地方裁判所に会社更生申立を行い、その認可決定が得られた経緯は皆様方も記憶に新しいところかと思います。会社の破産は取引関係者の債権を無価値にするだけではありません。それは雇用を奪い、従業員の生活を破壊します。その会社が培ってきた技術や文化も破壊します。法律家はかような経済的社会的背景を理解しながら法的手立てを考えていかなければなりません。その地域の経済的社会的背景を共有する「地域に根ざした弁護士」が育たなければならない意義がここにあります。
これは倒産事件に留まりません。知的財産権や国際商取引の重要性が増す中で、弁護士業務の対応が遅れている面もあろうかと思います。私もこれらの専門分野に関して「自分で出来る分野」と「自分だけでは出来ない分野」を意識して、これらに詳しい弁護士との連携を築きながら「筑後の問題は筑後で対応する」という気概を維持する必要性を感じています。そのためには個々の弁護士だけの努力では限界があります。弁護士会が組織として高度なネットワークを築いてゆく必要があります。
本日は久留米市役所と久留米商工会議所の皆様に参加頂いております。これまで弁護士会は両者が運営する法律相談業務を受託し個々の弁護士が担当してきました。相談のみならず具体的に事件を受任することが多々ございました。それが久留米市民や商工会議所の会員の皆様のお役に立ってきたことは間違いないと自負しております。しかし、これまでの弁護士会の対応はどちらかというと受け身というか、消極的なもので、具体的な行動は個々の弁護士に委ねられていた面が強かったと思われます。本年4月から日弁連が中小企業法律支援センターの活動を積極的に始めたのは、これまで行政や企業との関わりが個々の弁護士に委ねられており、組織としての対応が十分ではなかったことの反省の上に立ち、中小企業支援のための無料相談を行い、必要がある場合には弁護士が受任まで含めて積極的に対応することを宣言したことにあります。こういった弁護士自身の自己改革の努力が行政や商工団体の皆様に理解頂けますならば日弁連が掲げる中小企業支援という理念が中身を伴うものになっていくものと私は考えます。弁護士会は会員に対する研修を強化しておりますが、今日の研修は上述しましたネットワーク構築の1つという意義もあると考えます
* 久留米市役所と商工会議所から多くの参加者を得て活発な議論が行われました。懇親会も行われ3者の緊密なネットワークが構築できたかと思います。