介護事故の研修会
ある介護施設において介護事故に関する法的見地からの研修会を依頼されました。そのときに取り纏めたレジュメです(一部補正しています)。
第1 介護事故の具体例と対象者の属性
1 介護事故の具体例(転落・転倒・誤嚥・注射事故・薬の取り違えなど)
*最も生じやすいのは「転倒」 (事故全体の47~63%)
2 対象者の属性(運動能力・反射能力・理解力の低下)
*死亡が生じやすいのは「誤嚥」 (死亡事故全体の45~62%)
第2 過失の認定について(判例一覧表を添付)
1 過失の2類型
(1) 積極的過失(不作為規範の抵触) 「してはならないことをする」
(2) 消極的過失(作為規範の不履行) 「すべきことをしない」
2 過失の認定方法
(1) 前提状況の把握 内包されている危険性の認識
(2) 注意義務の設定 規範定立(作為規範・不作為規範)
(3) 義務違反行為の認定 事実のあてはめ(不作為・作為)
3 具体例 訴訟事例を検討 (認容例と棄却例の分析)
第3 介護事故の予防と発生時の対処
1 介護事故の予防
事故事例を検討し、同じニアミスがなかったか、重大事故に繋がらないようにするため今後どうしたらよいかを考える。個々の行為者の意識と組織全体の意識の両方が必要(車の両輪)。管理者は建物・ベッド・器具類の構造的問題が無いか否か再確認。ミスが生じやすい(人的・物的)前提を取り除くことが大切。
2 発生時の対処
事故(ミアミスを含む)が発生した場合は、損害を最小限にするために以下の心得を持つようにしていただきたい。①迅速かつ丁寧な対応(救急出動要請を含む)②報告・連絡・相談の徹底③記録の客観化(詳細に)④顧問弁護士や損保への連絡
* 上から目線で「ミスをするな」と怒鳴るのではなく「人間はミスをする」という前提でミスを生じやすい環境的要因を取り除いてゆくこと・そのために個々の行為者と組織全体の管理者が問題意識を共有していくことが大切だと考えます。